身近な法律相談例

 ここでは、具体的な事例をあげて、法律相談のサンプルをQ&A形式で紹介しています。
 ご関心のあるサンプルがありましたら参考にしてください。
       



File No.14

 数年前のサラ金の返済が残っていましたが,今般住民票を移したら住所が知れて支払請求され,その後裁判所から支払督促が届きました。どうしたらよいですか。

 時効が成立していることもあります。取り敢えず支払督促に対して異議の申立てをして,その後の対応について弁護士に相談されるとよいと思います。あなたの支払義務や支払能力等を検討して,相手方と交渉しあるいは裁判に対応してくれます。場合によっては,利息制限法の基準に引き直して再計算すると過払になっていて,過払額の返還を請求できることがあります。異議の申立ては,支払督促が到達してから2週間以内にする必要がありますので,忘れずにしてください。方法は,支払督促に同封された書面(異議申立書)にその旨記載して裁判所に返送すればよいので簡単です。






File No.13

 貸室の家賃を何ヶ月も滞納されて困っています。敷金は2か月分しかもらっていません。これ以上催促しても支払ってくれないなら立退きを求めたいのですが,その方法を教えてください。


 賃貸借は継続的契約であり,このような契約を解除して賃借人の立退きを求めるには,それなりの条件と手続が必要です。どのような場合に契約を解除できるか契約書の条項をよく確認の上,借主との信頼関係が破壊されたと考えられる場合には解除が可能となります。家屋の明渡しと共に未払賃料相当額を損害金として請求できます。未払家賃については,保証人がいれば保証人に請求できますので,まず保証人に請求してみてください。明渡しを受ける際には,未払家賃等と相殺する方法で敷金からの回収を考えます。
  一定期間までの支払を督促し,支払がなければ契約を解除して明渡しを求める旨の内容証明郵便を送付する必要があります。支払期限後に契約の解除の通知書を内容証明郵便で送付し,任意に明渡しに応じなければ,賃料・損害金の請求と共に建物明渡しを求める訴訟を提起することになります。

                                          (2006/4/7up)



File No.12

 クレジットカードを紛失し,そのカードを利用されてしまい,多額の請求がカード会社から私のところへきました。払わなくてはいけないのでしょうか。


 発行されたカードがあなたに正規に到達されている場合は,その後に紛失,盗難等によって何者かに使用された責任はあなたに生じます。その場合でもすみやかにカード会社に紛失を届け出ると規約により一定期間免責されることがありますので,規約を確認してください。ただし,カードがあなたの手元に届いていないときは責任は生じません。カードの更新時期に転居したりすると本人に届かず,前住居地に送付されたまま何者かに使用される事態が発生することが考えられます。カード会社によっては簡易書留等によらず普通郵便で送付しているところもあるので要注意です。カード会社に転居通知をしてそのような過誤防止を図る必要があります。

                                          (2006/1/11up)



File No.11
 
 ゴルフ会員権の預託金の措置期間が満了し返還期日がきたので,ゴルフ会社に預託金の返還を求めましたが,資金がないので理事会で検討中と言ってなかなか支払ってくれません。

 
 バブル崩壊後のゴルフ場経営会社の多くは経営が苦しく,ことに,会員権価値の下落によって会員権を市場で譲渡して投下資本を回収することが困難となったため,措置期間の満了とともに預託金の返還請求が集中するようになりました。本来期限が来たら直ちに返還すべき預託金の返還ができないところが少なくないようです。会社側は会則に定めた措置期間を延長したり,分割払を提示してきますが,会社は,会員の個別の承認なしに理事会がした措置期間の延長に関する決定の効力を会員に主張できないとするのが判例です(最高裁判所昭和61年9月11日判決)。したがって改めて粘り強く支払交渉し,場合によっては訴訟を提起して返還を求める必要がありますが,会社側の支払能力次第という面もあり,分割払となるのもやむを得ない状況です。

                                           (2005/9/27up)


File No.10
 
 大分前に知人に頼まれて金を貸してやったのですが、その後とっくに返済期日を過ぎているのに、何度催促しても返済してくれません。電話の督促では居留守を使われてしまいます。少しずつでも返済するという誠意があるならまだしも、このままでは許せません。

 
 相当以前の貸金ですと時効の問題があるので、ご注意ください。一般の貸金債権は10年の消滅時効があります。また、貸した金額にもよりますが、支払意思がないか、あってもまとめて支払できない人だと調停の申立てや訴訟が必要かもしれません。内容証明郵便で督促して交渉したり、支払督促の申立てをする方法もあり、相手の資産状態の調査も必要ですので、ご相談ください。訴訟の場合は、相手方の弁解(借入れを否認するのか、借りたが返したというのか、今は返せないというのか、時効が成立したというのか)に応じた主張・立証が必要なので、相手方が返済しない理由について、何と言っているのか、その際のやりとりや督促の時期・状況等よく記録するとともに、貸付時の証拠を保存しておいてください。

                                           (2005/7/12up)


File No.9
Q
 サラリーマンですが、5〜6年前にサラ金から借入れしたのを契機に、借入れと返済を繰り返すようになり、今では7,8社から約350万円以上の負担を抱え、毎月の支払がとても苦しいです。毎月定収入があり、月約8万円程度なら返済に充てられますが、現在毎月の返済額は約15万円で、これ以上の返済を続けていくのは困難です。どうしたらよいでしょうか。


 いわゆる多重債務者として今後の支払が困難となった場合は、任意整理か自己破産の申立てを選択するのが一般的ですが、その中間的なものとして、債務総額が多く任意整理では返済が困難であり、住宅ローンの残っている住宅を確保したいとか破産を避けたい理由があるときなど、個人再生の申立てをすることもあります。業者と支払能力の範囲内で支払額と支払方法について交渉をして、それが不可能であれば裁判所に破産の申立てをするほかありません。しかし、債務総額の支払は困難であるが、将来継続的に一定の収入が見込まれる個人事業主や給与所得者が原則3年間で法律上の最低弁済額又は可処分所得の2年分以上の支払が可能なときも、個人再生の申立てができます。
 弁護士に委任しますと、弁護士から各債権者に事件受任通知を発し、債権者の協力を得て債権額、取引経過を開示してもらい、債務額を利息制限法に引き直して計算した上で、債権額を確定し、支払能力を検討して債務整理の方針を選択します。任意整理の場合は、負債総額と毎月の返済可能金額がポイントとなり、破産の場合は、不動産の有無や免責障害事由の有無がポイントになります。東京地裁では、不動産や一定額以上の生命保険の解約返戻金又は退職金等ある程度の資産がある場合、あるいは免責障害事由が存する場合などに少額(20万円程度)の予納金で管財人を選任して処理する制度が採用されており、同時廃止事案か少額管財制度を利用した異時廃止事案として申立てするか弁護士が判断して申立てします。また、個人再生の場合は、債務総額の一定以上の金額について再生計画案が設定できるかどうかですが、住宅ローンの返済がある場合は、その返済計画についても別に住宅資金特別条項を付加して並行して返済していけるかどうかがポイントとなります。いずれにしても、このままでは支払を怠ると督促が集中しますので、できるだけ早くご相談ください。

                                          (2005/6/7 up)


File No.8

 友人が以前から付き合っていた男性からストーカー被害に遭っており、何とかしてあげたいのですが。たとえば無言電話が夜昼なくかかってきて睡眠不足や不眠症になり、一時はノイローゼになったと言っています。職場にも電話がかかってきて仕事ができない状態でした。捨てたゴミを持ち去られてストーカーとの想い出の品を捨てたことが分かるとある時は合鍵で屋内に侵入されたり、郵便受けにそのことを避難するメモやカミソリや動物の死骸を置かれ気持ち悪いし、職場から自宅までよく後を付けてきてしばらく問外で見張っていたり、石を投げたりするようで、自宅に一人でいることを怖がっています。


 被害の内容を詳しく説明できるように記録しておいて下さい。執拗な無言電話により身体の不調を招いて医師の診断・治療を要する状態になれば傷害罪になりますし、仕事を妨害されれば業務妨害罪にもなります。家屋はもちろん敷地内に立ち入れば住居侵入罪となります。投石行為は状況によって暴行罪ないし器物損壊罪に該当します。また、置きメモの内容によっては、カミソリを送り付ける行為共々脅迫罪となり得るし、そのような暴行脅迫によって、面会や復縁要求されれば強要罪にも該当します。こうした刑法上の犯罪を問うのが困難な場合は、2000年11月に施行されたストーカー規制法による取締りも可能となりました。警察署長等につきまとい等をしないよう警告を求める申出をして警告してもらったり、これに従わない者には都道府県公安委員会が禁止命令を発することができ、禁止命令の違反者は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金を処せられます。ストーカーはある意味で殺人未遂ないし殺人予備に匹敵する行為であることを思い至すと、同法の罪は軽きに失する感がありますが、見直し規定が存するので今後の運用、改正が期待されます。いずれにしても証拠を集めて弁護士に相談して下さい。何らかの犯罪に該当すれば捜査機関告訴したり、立入り禁止等の仮処分や損害賠償請求を検討します。

                                        (2005/5/11 up)


File No.7

 
大家からアパートを取り壊すからといって立ち退きを求められましたが、引越し資金もなく、困っています。どうしたらよいでしょうか。

A
 建物の老朽化や土地の再利用のためアパートを取り壊す場合は立退きを求める正当事由となり得ますが、借主側の事情も考慮されますから、若干の立退料の請求は認められる余地があります。借家契約の期限や更新しない場合の手続などの定めがあると思いますので、契約書を確認の上、引越費用等の請求について交渉してみたらどうでしょうか。代わりに弁護士が交渉しますのでご相談ください。

                                        (2005/4/15 up)


File No.6
 
 娘がマスコミで問題となっている詐欺的な宗教団体にお布施と称して多額の現金を提供したことがわかりました。返金してもらえるでしょうか。

 
 宗教を隠れみのにした詐欺的商法が後を絶ちません。そのときは一応自己の意思で金銭を提供したとしても、詐欺あるいは不法行為として損害賠償を請求することが可能です。ただ娘さん本人は、いまだ信者としてマインドコントロールされて被害者意識がない場合がありますので、損害賠償請求が難しい場合があります。他の被害者の話やマスコミ報道を通じて早く目覚めさせることが必要です。家の財産を持ち出されないように十分資産管理し、娘さんには毅然とした態度が必要です。

(2005/1/26 up)


File No.5 
 
 取引先の女性と交際が始まり、一応結婚も考えたのですが、私生活を干渉されるので嫌になり、半年余りで別れたところ、突然婚約を破棄したとして慰藉料請求の訴えを起こされました。支払わなければならないですか。


 果たして二人の間に法律上婚約が成立したと認められるのか、また、婚約が成立しているとしてあなたが一方的にこれを破棄したといえるのか法律的に検討を要します。婚約が成立するには、男女間に将来婚姻しようとする真摯な合意がされれば足り、婚約指輪や結納の贈与・交換、親族への紹介等は必ずしも必要でないとされています。ですからこうした外形的な事実がない場合は水掛け論になりがちですが、相手の証言が信用されると婚約が成立したと認定される可能性はあります。そして婚約の一方的破棄かどうかは、別れるに至った経緯、状況によりますので、この点事実をよく弁護士に説明し、どんな証拠があるか検討しなければなりません。訴訟を提起された以上は弁護士に対応してもらうのが適当です。

                                          (2004/12/14 up)


                       File No.4
Q
 自動車を運転して幹線道路を走行中携帯電話で話し中に前方で横断中の中年女性に衝突させる交通事故を起こし、相手の方を死亡させてしまいました。どんな責任がありますか。賠償金はいくらになるのでしょうか。近くに横断歩道はなく横断禁止の場所でしたが、私が電話に気を取られていたのが原因です。


 民事責任として損害賠償責任が、刑事事件として業務上過失致死等の責任が生じます。免許取消し等の行政処分も免れません。賠償金としては、治療関係費や葬儀費用のほかに、逸失利益、慰謝料等の支払義務が生じますがこの部分は相手方の年齢、職業によって異なってきます。また、過失相殺も問題となります。主婦(家事従事者)の収入は、賃金センサスにより女子労働者の平均賃金の額を基礎として算定します。これから主婦の生活費控除をして、就労可能年数(67歳までの就労可能年数)に対応するライプニッツ係数(中間利息を控除するための係数)を掛けて計算し逸失利益を算出します。こうした損害額に対して、被害者の過失割合による相殺をして最終的な損害額を算定します。本件の場合、被害者の過失は20パーセントの基本的な過失割合に、被害者及び加害者の過失の程度を加減して算出します。被害者のそれとしては幹線道路、横断禁止場所等が、加害者のそれとしては住宅・商店街、著しい過失等が要素となり得ます。契約していた自動車保険等の内容を確認の上、示談代行付きの自動車保険であれば保険会社の担当者によく事実関係を説明すると共に、被害者の遺族に誠意を示すことが円満解決の近道です。加害者になったときのために保険料を支払ってきた自動車保険のはずですから、損害が保険金でまかなえる限り、保険会社任せにせず被害者遺族の早期救済のため迅速な保険金の支払に協力すべきです。

                                          (2004/10/28 up)


File No.3

 妻が入院先の病院で、容体が急変し突然なくなってしまいました。術後の経過も良好だと医師から言われていたのに、急に亡くなってしまったことに納得がいきません。医師や病院に何か過失があったのではないかと思うので、可能でしたら損害賠償請求したいのですが。

 
 変死の場合には検察官等による検視と司法解剖が行われます(刑事訴法229条、223条1項)。したがって、医療行為による過失によって業務上過失致死(刑法221条)の疑いがある場合には司法解剖に付されます。医師の過失の有無ははっきりしないが、医療中の事故死や死因が判然としないもの、死亡時の状況が異常 なものについては、行政解剖に付される可能性があります。病院側から病理解剖の申出がないときは、遺族自らの解剖の申出をすることをお勧めします。そして、死因及び死亡に至る経緯について病院側によく説明を求めることです。これまでの検査結果や医師とのやりとりを詳しくメモして保存しておくこと、説明は知人を同席させるなどして複数で受けるか、できれば書面で回答してもらうなど証拠化するようにしておくと良いと思います。説明を避けたり、事実経過と違う説明で納得できないようでしたら、弁護士に相談してみてください。カルテを証拠保全するなどして医師や病院側の過失の有無を検討し、訴訟の可否についてアドバイスしてくれます。医師ら病院職員の過失が認められる場合は、その過失と因果関係のある全損害の賠償を請求することができます。

                                        (2004/9/22 up )


File No.2

 わき見運転の車に追突される事故にあい、怪我をして通院治療中です。加害者からは何の謝罪も治療費の支払もありません。どうしたら良いでしょうか。


 追突によるいわゆるむち打ち症の場合、怪我はないとして物損扱いとして処理しがちですが、翌日になって首が痛くなることが少なくないので、必ず事故にあったことを警察に届出して、事故証明をもらうことが大切です。人身事故でしたら警察が業務上過失傷害事件として立件して検察官に送致することになるので、加害者の処罰や賠償が期待できます。とりあえずの治療費、休業損害等については、加害者が任意保険に加入していれば、保険会社の担当者と交渉すると、自賠責保険の範囲内で治療費等を仮払してくれます。また、治療が終了して損害が確定した後に支払額が呈示されるので、その金額が妥当かどうか弁護士に相談されるとよいと思います。最終的な示談は、損害が確定してからになりますので、怪我が治癒するか、後遺症認定を受けてからになります。自賠責保険は傷害の場合は120万円という限度額があるので、長期の治療で治療費が高額になりそうな場合は、健康保険を適用するとよいと思います。

                                        (2004/9/1 up )


File No.1
 Q
 夫が他の女性と親しくなって家を出て同棲しています。離婚したいのですが、二人の子どもがいるので、今後の生活費や養育費のことなどを考えるとどうしたら良いか分かりません。


 A  
夫に条件次第で離婚意思があるというのであれば協議離婚が可能ですが、否定的な場合は、まず家庭裁判所に調停の申立てをしなければなりません。離婚訴訟を提訴するには、調停を経ることが要件とされているからです(調停前置主義)。そこで不調になると、裁判で認めてもらうためには裁判上の離婚事由(民法770条)が必要です。さらに、離婚の際には、子の親権者を決めたり財産分与について協議しなくてはなりません。本件では夫の不貞行為を理由にその交際相手共々慰謝料を請求することができます。財産分与は、離婚によって得られた夫婦の共有財産の清算を意味しますから、夫婦の共有財産の調査が必要です。また、未成年の子がいる場合は離婚しても父母共に原則として成人に達するまで扶養義務がありますから、その扶養料の分配も決めなくてはなりません。資料を持参してご相談下さい。


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